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遺族年金とは

2023.09.06

 

 家族を支える方がお亡くなりになったとき、ご遺族にとって支えになるのが遺族年金です。受給要件や受給額の計算方法が複雑なため、不安に思われている方も多いのではないでしょうか?

 亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしていないと遺族年金は受け取ることができません。

 今回はその遺族年金について解説したいと思います。(更新日:2023年4月1日)

 遺族年金は日本の公的年金で、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。亡くなった方が、どの年金に加入していたかでもらえる年金の種類も要件も変わります。なお、遺族年金は相続放棄をしていても受け取れますので、受給漏れのないように気をつけましょう。

 

【1】遺族基礎年金とは

(1)概要

 遺族年金のうち国民年金の被保険者など一定の者が亡くなった時に子供のいる配偶者や子供に対して支給されるものが遺族基礎年金になります。

 遺族基礎年金を受け取るには子供がいる必要があります。子供のいない配偶者は対象になりません。

 遺族基礎年金は子供の生活を守る遺族年金なので、子供のいない配偶者は自分で収入を確保しなければいけないこととなります。

(2)遺族基礎年金はいつまで受給できるのか?

 子供が「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」である必要があるため、一般的に子供が通常高校を卒業するまで期間まで受け取ることができます。

(3)遺族基礎年金の受給要件

 次の1から4のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族基礎年金が支給されます。

 ①国民年金の被保険者である間に死亡したとき

 ②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき

 ③老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき

 ④老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

(4)遺族基礎年金の受給対象者

 死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族が受け取ることができます。
なお遺族厚生年金を受給できる遺族の方はあわせて受給できます。

ただし、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。

    ①子のある配偶者

    ②子

     遺族基礎年金の受給者の要件である『子』とは、以下の要件を満たした『子』を言います。

     ・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子

     ・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子

     ただし、婚姻していない子に限り、死亡当時、胎児であった子も出生以降に対象となります。

    (5)貰える遺族基礎年金の額

     2023年(令和5年)4月分からの遺族基礎年金の年間支給額は下記のとおりになります。

     ①子のある配偶者が受け取るとき

    67歳以下の方

    (昭和31年4月2日以後生まれ)

    795,000円 + 子の加算額
    68歳以上の方

    (昭和31年4月1日以前生まれ)

    792,600円 + 子の加算額

    ②子が受け取るとき

     次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額となります。

     795,000円+2人目以降の子の加算額

     (子の加算額)

     ・1人目および2人目の子の加算額 各228,700円

     ・3人目以降の子の加算額 各76,200円

     

    【2】遺族厚生年金とは

    (1)概要

     遺族年金のうち会社員や公務員など厚生年金に加入していた方が亡くなった際に支給されるものが遺族厚生年金になります。

     亡くなった方の収入で生活をしていた遺族が受給できる点は遺族基礎年金と変わりはないですが、妻や子、孫、死亡当時の年齢が55歳以上の夫や父母、祖父母など受給できる対象が広がります。 

    (2)遺族厚生年金はいつまで受給できるのか?

     遺族厚生年金は、受給要件を満たしている間は受け取ることができます。

     ただし、遺族厚生年金の受給権者が「婚姻した場合」や「養子になった場合」などは受給できなくなりますし、遺族年金以外の公的年金を受給する場合は、遺族厚生年金の支給が停止されることがあります。

    (3)遺族厚生年金の受給要件

     次の①から⑤のいずれかの要件を満たしている方が死亡したときに、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

     ①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

     ②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

     ③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

     ④老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

     ⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

    (4)遺族厚生年金の受給対象者

     死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族のうち、番号の若い順の方から受け取ることができます。なお遺族基礎年金を受給できる遺族の方は遺族基礎年金もあわせて受給できます。

     ①妻(※1)

     ②子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)

     ③夫(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※2)

     ④父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)

     ⑤孫(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)

     ➅祖父母(死亡当時に55歳以上である方に限ります。)(※3)

     ※1 子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。

     ※2 受給開始は60歳からとなります。ただし遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます。

     ※3 受給開始は60歳からとなります。

    (5)貰える遺族厚生年金の額

     遺族厚生年金の年間の支給額は、死亡した方が厚生年金に加入していた期間の報酬(給与や賞与)の金額から計算されます。

     原則では次の①の計算式で計算しますが、②の計算式で計算した金額の方が多い場合はその金額が支給額となります。

     ①{平均標準報酬月額(※1)×7.125/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額(※2)×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数}×3/4

     ②{平均標準報酬月額(※1)×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額(※2)×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数}×1.014(※3)×3/4

     ※1 平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額です。

     ※2 平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。

     ※3 昭和13年4月1日以前に生まれた方は1.016となります。

     

    【3】その他死亡が原因で支給されるもの

     死亡した人が自営業者等であった場合は、もらえる遺族年金は遺族基礎年金だけで、支給対象になる子がいなければもらうことすらできません。

     ただし、自営業者など国民年金の第1号被保険者が死亡して遺族基礎年金がもらえない場合は、寡婦年金と死亡一時金のどちらかがもらえます。

    (1)寡婦年金

     寡婦年金とは、死亡した夫がもらえるはずであった老齢基礎年金の一部を妻に支給するものです。

     一定の要件を満たすと、妻は60歳から65歳になるまで夫の第1号被保険者の期間だけで計算した老齢基礎年金の4分の3の金額をもらうことができます。

    (2)死亡一時金

     死亡一時金は、自営業者であった人が老齢基礎年金や障害基礎年金をもらわないまま死亡した場合に一度だけ支給されるものです。死亡した人の第1号被保険者としての保険料納付済期間(一部免除の期間も含む)が36か月以上ないと支給されません。また遺族基礎年金をもらえる遺族がいるときについても死亡一時金をもらうことができません。死亡した方と生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。支給される金額やその他注意すべき点については下記のとおりになります。

    死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
    付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
    遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。
    寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します。
    死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。