最新情報

海外にある資産の相続、事前準備の重要性

2023.09.25

配偶者あるいは両親が、海外に現金や預金、著名な絵画や貴重な骨董品を備えたコンドミニアムを保有しているけど、相手に万一の事態が生じたら、いったいどうなるんだろう?と不安を感じたことはありませんか?

突然、ご遺族となられた方が海外資産相続に直面して、何から手をつけたら良いのか分からず、困っておられるケースが見られます。

こんな時の手続きや事前の準備の重要性について解説いたします。

 

日本で相続が発生した場合、亡くなられた方(被相続人)が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告を行うこととなっています。

 

仮に亡くなられた方(被相続人)が、例えば父親が積極的に不動産投資をしていた場合、あるいは配偶者に海外での駐在期間があった場合などには、遺産の中に「海外資産」が含まれていることが考えられます。

「海外資産」を相続する場合については、一般的な相続とは別に、「国際相続」と呼ばれています。

 

「国際相続」の中でも、海外に不動産を保有していた場合には、相続において日本国内にある資産・財産とは取り扱いが異なる可能性があります。

したがって10ヶ月以内と言う短い期間の間に、「海外資産」の把握から取り扱いの確認などが必要な「国際相続」については、事前の準備がとても大切になります。

 

 

1 国際相続が生じる場合って、どんな時?

国際相続が生じる場合の海外資産とは、次のようなものを言います。

 

⑴ 被相続人が海外に不動産を所有しているケース

 

最近は海外のコンドミニアムへ不動産投資を行う人も増えており、親が亡くなったときに「ハワイやマレーシアに不動産を所有していた」ことを知ったという例もあります。

<h3> 海外に被相続人名義の預金口座があるケース

長期間、海外赴任していたことのある方、定年退職後に海外に移住して生活していた方は海外に預金口座を持っている可能性が高いと思われます。相続の時には預金口座の解約や名義変更などが必要になります。

<h3>⑶ 海外に動産(絵画や骨とう品など)を所有しているケース

被相続人が海外で居住していた場合、現地の居宅内に価値のある絵画や 骨とう品などの動産があれば海外資産として遺産相続の対象になります。

国税庁参考資料はこちら

<h2>2 国際相続で適用される法律(準拠法)について

亡くなられた方(被相続人)の遺産の中に海外資産が含まれており国際相続に該当するケースでは、どの国の国際私法に基づき、どの国の相続法(準拠法)が適用されるかを確認する必要があります。

ここで国際私法とは、外国において発生した法律関係や外国人が登場する法律関係について、どの国の法律(準拠法)を適用すべきかを定めた法律を言い、各国において定められており、その内容はそれぞれ異なります。

次に準拠法というのは、その国の国際私法により、外国関係の法律関係について適用されるべきであるとされた国の法律です。

 

<h3>⑴ 海外不動産の場合

被相続人の最後の住所地または遺産所在地が日本である場合の相続問題については、原則として、被相続人の本国法(日本法)が適用されることになります。

ところが、不動産については特別に「所在地の国の法律を準拠法とする」とする国があるため、海外に所在する不動産を保有していた場合には被相続人の本国法が適用されるとは限りません。

このように不動産とそれ以外の資産の取扱いを分けるやり方を「相続分割 主義」といいます。 

「相続分割主義」は、アメリカ・イギリス・フランス・中国などで採られているので、不動産については、その所在地の国の法律が適用されます。

相続分割主義のほかに、すべての遺産について統一的に相続処理を行う「相続統一主義」があり、日本もこちらに含まれます。ただ同じ相続統一主義でも「被相続人の本国」を基準とする国や「被相続人の最終の住所地」を基準とする国がありますので、注意が必要となります。

 

<h3>⑵ 不動産以外の海外資産の場合

不動産以外の海外資産の場合は、原則、被相続人の本国法が適用されます。

 

以上、見てきたように、日本人が海外不動産を所有していた場合には、相続時にさまざまな国の法律が適用される可能性があり注意が必要になります。

 

 

<h2>3 遺言(will)がある場合について

日本法では遺言の要件を満たさなくても、国によっては「遺言作成時の住所地の法律」や「不動産の所在地の法律」などの要件を満たせば遺言が有効になる可能性があります。

また、日本では認められていませんが、「録音」が認められている国もあります。こうした場合には、日本では無効となる遺言も有効になる可能性が発生します。

したがって、国際相続の事案で遺言が残されていたら「準拠法」を調べた上で、その有効性を確認する必要があります。

 

 

<h2>4 海外資産の相続手続について

海外に相続財産があり、現地の法律が適用される場合、日本の相続手続とは大きく異なることがあります。

例えばアメリカでは、プロベイトといわれる検認裁判が必要になります。

 

<h3>⑴ プロベイトがある国について

プロベイトとは、裁判所の関与のもとに遺産相続手続を進めるものです。

具体的には、裁判所が「人格代表者」を任命し、人格代表者が相続財産の調査や確定、負債の支払いや税金申告等を行います。

最終的に裁判所が相続財産の分配について許可を出したときに相続人ら が海外資産を受け取ることができます。検認裁判には時間(おおよそ1年から3年間)がかかります。加えて、現地の弁護士の関与が必須になるので費用もかかります。何の準備もせず、突然、相続が発生した場合には、長い時間と多額の費用の負担に直面する可能性が潜在しているということになります。

プロベイトを回避できる方法としては、「共同保有」という保有形態をとることや、生前に次の所有者を決めておく「生前信託」という方法もあります。

 

<h3>⑵ プロベイトがない国について

日本にはプロベイトという手続はありません。

そのため、日本では遺産分割協議を行い、相続人全員の署名押印がある遺産分割協議書を作成し、それに基づいて相続財産を相続人間で分配して相続手続終了となります。

世界には、プロベイトがない国も多数あります。

 

 

<h2>5 海外資産の相続税について

海外資産を相続する際に「相続税がかかるの?」と疑問を持たれる方もいます。国際相続では、被相続人と相続人の国籍や住所によって取り扱いが異なります。

日本での相続税は、国内財産・海外財産を合わせて、亡くなった方の住所地の税務署に申告・納税することになります。

アメリカでは、日本の相続税に類似した遺産税というものがあり、日本に居住している者は、アメリカから見て非居住者となりますが、この場合アメリカ国内の財産が課税対象になります。

そのほか日本でも海外でも相続税がかかる場合には、二重課税の状態になります。この二重課税部分については、日本で申告をする中で調整することができる場合があります。

 

ここまでみてきたように、相続財産に海外財産が含まれている場合、日本とは異なった複雑な相続手続をしなければならない可能性があります。

そのための事前の検討を十分に行っておくことが非常に重要であることがお判りいただけたのではないかと思います。

ご家族の方で海外資産を所有されている方や国際相続を心配されている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。