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不動産の名義変更とは?

2023.10.16

不動産の名義変更とは?

相続や売買、贈与などによって不動産の所有者が変わるときには、「名義変更」が必要になります。不動産の名義変更の正式名称は「所有権移転登記」といいます。登記記録は法務局にて管理されており、所有権移転登記をすることによって、不動産の所有権を第三者に対抗(主張)することができます。

今回は、不動産の名義変更が必要かもしれない方に向けて、名義変更が必要になるケースや、そのときの手順、必要な書類について解説していきます。

 

不動産の名義変更が必要になる4つのケース

一般的に、名義変更が必要になるケースは「不動産売買」「遺産相続」「財産分与」「生前贈与」の4つです。それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

不動産売買

不動産の売買をした場合、買主が所有権を第三者に対抗(主張)するために名義変更が行われます。この際、不動産の名義変更は売却代金の支払いと物件の引渡しとを同時に行うのが一般的です。また、売却する不動産に抵当権等の担保権が設定されていた場合には、同時に「抵当権の抹消登記」も行います。

 

遺産相続

不動産の所有者が亡くなった場合、亡くなった人(被相続人)からその不動産を相続する人(相続人)へと名義を変更する必要があり、これを「相続登記」といいます。

相続登記は、これまで登記しなければならない期限の取り決めはなく、放置していても何ら問題はなく、実際相続登記を放置しているケースが多々ありました。しかし、近年、所有者不明の空き家放置の問題が増加してきた背景もあり、202441日より義務化されることになりました。これによって現在は、不動産の所有者が亡くなってから3年以内に相続登記を行う必要があります。もし正当な理由なく怠った場合には、10万円以下の過料が課せられることとなるため、注意が必要となります。

 

財産分与

離婚に伴う「財産分与」の際に、不動産の名義変更が必要になるケースもあります。財産分与とは、夫婦が離婚する際に、それまで夫婦が共に形成してきた財産を公平に分配する制度で、原則的には夫婦の財産を2分の1ずつに分けることになっています。

財産分与の際に名義変更が必要になるケースは、たとえば夫が現金預金の代わりに不動産を妻に引き渡す場合や、もともと夫婦の共有名義(1つの不動産を複数の人が共同で所有していること)だった不動産を、片方の名義に変更するというような場合です。

 

しかし、土地と建物で所有者の名義が違う場合や、住宅ローンが残っている場合には手続きが複雑になりやすいので、司法書士や弁護士などと相談しながら慎重に進めましょう。

 

生前贈与

生前贈与とは、不動産をはじめとする財産を、その所有者が生きているうちに誰かに無償で譲渡することです。相続税対策として生前贈与を行う方もいます。このような生前贈与によって不動産を贈与する場合、名義変更を行うことが必要です。

生前贈与を行うと、財産を受け取る(もらう)側に対して、その財産に応じた贈与税が課税されます。特に不動産の贈与を受けた場合には、取得した不動産を登記する際に必要となる、登録免許税や、取得した不動産の評価額を基準に算定される不動産取得税がかかります。生前贈与を検討する際には、こうした費用も念頭にいれ行うようにしてください。

 

不動産の名義変更手続きの流れ

不動産の名義変更の流れについては、上記でご紹介した4つのケースそれぞれに共通する手順と異なる手順があります。

 

まずは、不動産売買の場合から名義変更の流れを見ていきましょう。

不動産売買にあたって不動産の名義変更を行う際は、以下の流れで手続きを行います。

1 ] 売買契約の成立

不動産の売買契約が成立した場合、売主と買主で売買契約書を作成します。このとき、不動産会社が仲介しているなら、売買契約書は不動産会社が作成してくれます。

2 ] 必要書類の収集

必要書類は売主と買主でそれぞれ異なります。自分の立場に合わせて必要な書類をそろえましょう。主に売主側は、権利書(登記識別情報)、印鑑証明書、住民票等の書類、買主側は、住民票、印鑑証明書等が必要となります。

3 ] 物件引渡しと代金の支払い

物件の引渡しと売買代金の支払いは、一般的には金融機関で売主と買主、不動産会社の担当者、司法書士などが一堂に会して行われます。売主と買主がそれぞれ用意した必要書類を司法書士に渡して、司法書士が確認をしてから買主が売主に売買代金を支払うと、取引が完了します。

4 ] 司法書士が法務局に申請

司法書士が不動産の名義変更を代行する場合は、司法書士が売主と買主それぞれから必要書類を預かり、法務局に対して売買による所有権移転登記の申請を行います。またこの際に、必要に応じて抵当権抹消登記も行われます。

5 ] 登記完了の確認

登記申請してから2週間ほどで登記が完了します。登記完了後に司法書士から権利証(登記識別情報)等の返却書類が売主と買主それぞれに、郵送されてきます。

法務局への申請から登記完了確認までの流れは、他の3つのケースの名義変更においても共通です。それ以外の流れはケースごとに異なるので、次は不動産売買以外のケース特有の流れについて、それぞれ見ていきましょう。

 

遺産相続の場合

不動産の相続手続きを行う場合の流れは以下の通りです。

1 ]不動産の名義を確認

登記事項証明書(法務局で取得するまたは登記情報サービス(オンラインサイト)で閲覧する)で、該当不動産の名義人を確認します。

2 ]必要書類の収集

相続登記を行ううえで必要な書類を集めます。主に亡くなった方の戸籍関係書類(出生から死亡まで一連したもの)や不動産の評価証明書等を収集します。

3 ]相続人の確定

遺言書があればそれに従い、ない場合は法定相続人を洗い出して、相続人に当てはまる人を確定させます。法定相続人の確認は、上記の収集した戸籍関係書類から行います。

4 ]遺産分割協議書を作成する

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割の協議を行い、誰がどの財産を引き継ぐか等の内容を確定させます。そのうえで、全員の署名と実印を集め、「遺産分割協議書」を作成します。

 

財産分与の場合

財産分与を行う場合の流れは以下の通りです。

1 ]財産分与の合意

最初に、財産をどのように分けるかについて夫婦間での合意が必要です。通常は離婚と同時に決めますが、離婚後に財産分与を請求することも法律上可能です。ただし、財産分与を請求する権利は離婚後2年以内と定められている点に注意しましょう。

2 ]必要書類の収集

財産分与に必要な書類は、裁判離婚(調停等で裁判所が関与している場合)と協議離婚(夫婦間における話し合いで離婚した場合)で異なります。裁判上の離婚の場合は、離婚調停調書の原本、財産をもらう人の住民票等が必要です。協議離婚の場合は、離婚の記載のある戸籍謄本、不動産の権利書、財産を渡す人の印鑑証明書、財産をもらう人の住民票等が必要です。

3 ]登記申請書類の作成

財産分与の登記申請書は、財産を渡す人ともらう人が共同で作成します。司法書士が手続き代行する場合は、司法書士が必要な書類を作成してくれます。

 

生前贈与の場合

生前贈与を行う場合の流れは以下の通りです。

1 ]添付書類の準備

贈与登記では、不動産を渡す人側は、不動産の権利書、印鑑証明書、住民票等、不動産をもらう人側は、住民票が必要です。

2 ]登記申請書類の作成

法務局に申請するための登記申請書類を共同で作成します。こちらも司法書士が手続き代行する場合は、司法書士が必要な書類を作成してくれます。

 

以上が、4つのケースそれぞれの名義変更の流れとなります。不動産の名義変更を行う際には、自分に当てはまるケースの流れを事前に把握しておきましょう。

 

不動産の名義変更にかかる費用

不動産の名義変更をするには、上でご紹介したどのケースでも基本的に費用がかかります。主にかかる費用の種類は以下の通りです。

登録免許税

所有権移転登記をはじめとした登記を行うには、必ず「登録免許税」という税金がかかります。所有権移転登記の際の登録免許税は、課税標準額に一定の税率をかけることで金額が決定し、登記の種類によって以下のように税率が異なります。登録免許税法では、登録免許税は「登記等を受ける者が二人以上あるときはこれらの者は連帯して納付する義務を負う」とされていますが、取引慣行上、登記によって対抗力を得る側が負担することが一般的です。

名義変更の種類     税率(本則) 支払い義務者(取引慣行)
遺産相続 1,000分の4 相続した人
財産分与 1,000分の20 所有権を取得した人
生前贈与 1,000分の20 贈与を受けた人
不動産売買 1,000分の20 買主

なお、登記は不動産1件ごとに必要になるため、たとえば土地付きの一戸建てを売買する場合は、土地と建物それぞれで所有権移転登記が必要です。この場合、それぞれに税金がかかります。また、抵当権抹消登記をする際は、住宅ローンの借主が不動産1件につき1,000円の登録免許税がかかります。抵当権抹消登記費用は売主が負担することが一般的です。

 

司法書士の報酬

登記を司法書士に依頼した場合は、その報酬を支払う必要があります。費用は不動産の価格や依頼する司法書士によって変わりますが、1件当たり数万~15万円程度が相場となるでしょう。また、相続登記の場合は、相続人の人数によっても金額が変化します。

 

上記でご紹介した費用以外にも、不動産の所有権を移転したことにより、かかる可能性のある税金があります。簡単にまとめると以下の通りです。

 

名義変更の種類     税金
遺産相続 相続税
財産分与 贈与税、譲渡所得税、不動産取得税
生前贈与 贈与税、不動産取得税
不動産売買 譲渡所得税、不動産取得税

離婚時の財産分与において基本的に贈与税はかかりません。しかし、あまりにも分与の割合に偏りがあると認められた場合や、贈与税の支払いを避けるために離婚したと考えられる場合には、贈与税が発生する可能性があります。また、分与時の不動産時価が取得時の時価を上回る場合には譲渡所得税、慰謝料や生活保護のために不動産を分与した場合には不動産取得税がかかる場合があります。

上記の表以外にも、移転に伴う引越し費用や不動産会社へ仲介を依頼した場合の仲介手数料など、場合に応じてかかる費用もあるので、事前に概算を把握しておくとよいでしょう。

 

 

不動産の名義変更に必要な書類

不動産の名義変更を行うには、書類の準備も必要です。名義変更のケースごとに必要書類は異なるので、以下を参照のうえ抜け漏れがないよう準備しましょう。

 

不動産売買で必要な書類

不動産売買で必要な書類は、以下の表に記載されている通り、売主と買主によって異なります。また、司法書士に依頼をする場合には、それぞれ委任状も必要です。

売主

3か月以内に取得した印鑑証明書

・登記済権利証(または登記識別情報通知)

・固定資産評価証明書(申請年度時のもの)

・住民票または戸籍の附表(登記上の住所から住民票の住所が変わっている場合)

・顔写真付きの本人確認書類

買主

・住民票

3か月以内に取得した印鑑証明書(住宅ローンなどの融資を受ける場合に必要)

・顔写真つきの本人確認書類

 

遺産相続で必要な書類

相続登記を行ううえで必要になる書類は以下の通りです。

被相続人に関する書類

・出生時から死亡時までの戸籍謄本

・住民票除票または戸籍附票

相続人に関する書類

・相続人全員の戸籍謄本

・遺産を譲り受ける人の住民票

・遺言書または遺産分割協議書

・法定相続人の印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合)

相続する不動産に関する書類

・登記申請書

・固定資産評価証明書(申請年度時のもの)

 

財産分与で必要な書類

財産分与の場合は、協議離婚と裁判離婚で用意する書類が異なります。基本的には夫婦が共同で書類を作成して申請する必要がありますが、裁判離婚の場合、一定の条件を満たせば、財産分与を受ける側が個人で申請を進めることもできます。

協議離婚の必要書類

分与する人

・印鑑証明書(3か月以内)

・登記済権利証(登記識別情報通知)

・固定資産評価証明書

・住民票または戸籍の附表(登記上の住所から住民票の住所が変わっている場合のみ)

・離婚の記載のある戸籍謄本

・登記原因証明情報

分与を受ける人

・住民票

裁判離婚の必要書類

分与する人

・なし

分与を受ける人

・住民票

・固定資産評価証明書

・調停調書、和解調書等

 

生前贈与で必要な書類

生前贈与では、以下の書類が必要となります。贈与者と受贈者とで用意する書類が異なるので、よく確認しておきましょう。

 

贈与する人が用意する書類

・印鑑証明書(取引日の時点で3か月以内に取得したもの)

・登記済権利証(または登記識別情報通知)

・固定資産評価証明書

・住民票または戸籍の附表(登記上の住所から住民票の住所が変わっている場合のみ)

贈与される人が用意する書類

・住民票

不動産に関する書類

・不動産贈与契約書

・登記申請書

 

このほか、必要な書類である印鑑証明書は、市区町村役場のほか、マイナンバーカードを所持していればコンビニエンスストアのコピー機でも取得が可能です。地域によってはまだ普及していない場合もあるので、お住まいの地域状況を事前に確認しておきましょう。

 

不動産の名義変更をしないとどうなる?

ここまで、不動産の名義変更に関する手続きの流れや費用についてお伝えしてきましたが、時間や手間がかかりそうで億劫に感じた方も多いかもしれません。もし不動産の名義変更を行わないと、不動産に対する自身の権利を主張できず、取得した不動産を売却したり、担保に入れることができなくなってしまうといったリスクがあります。そのため、不動産の名義変更は速やかに行いましょう。

とはいえ、不動産の名義変更には手間がかかるうえ、難しいのも事実です。そこで、不安な方は専門家に相談することをお勧めいたします。

 

相続にお悩みであれば、縁満へご相談ください。相続手続きを支援する弁護士・行政書士・司法書士・税理士が所属しております。土日祝日・夜間も対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。