豊中市、箕面市、大阪市を中心にの相続手続きのサポートをしております司法書士の清原です。今回は遺言書の作成に必要な費用についての記事になります。
まず遺言書とは、財産を所有する人が自分の死後に財産をどう分けるのかの意思を示した書面のことです。財産の分け方について生前に意思表示をし、自分が渡したい人に財産を譲ることが可能となります。
遺言書の形式(作成方法)は、大きく分けて2つあります。
遺言者自身が自書して作成する自筆証書遺言と、公証役場にて公証人が作成する公正証書遺言とがあります。
どちらの形式で遺言書を作成するか悩まれる方が多いのですが、できるだけ公正証書遺言で作成することをお勧めします。
1.遺言書作成はどのようにして作成する?
遺言書は自筆証書遺言であれば単独で作成することも可能ですし、弁護士司法書士等の専門家のサポートを受けて作成します。
公正証書遺言の場合は、ご自身で公証役場へ行って公証人と数回打ち合わせの後、作成するか、弁護士司法書士等の専門家に依頼し、遺言書の案を作成し、専門家が公証役場と打ち合わせをした上で作成します。
遺言書は法的な要件を欠いたり、形式不備等で無効となるケースや、遺留分や遺言執行者の指定等に配慮が欠けて遺言書があることで相続トラブルに発展するケースが多々起こります。
そういった遺言の無効や相続人トラブルを回避するためにも専門家のサポートを受けながら作成することが大切になります。
2.遺言書作成を専門家(司法書士)に依頼するメリットは?
法的要件の欠如、形式不備による遺言無効を防げる
戸籍など必要書類の収集の手間が省ける
公正証書遺言の手続きを一任できる
自筆証書遺言書保管制度の利用を支援してもらえる
登記手続きまでワンストップで依頼できる
それぞれのメリットを詳しく確認していきます。
① 法的要件の欠如、形式不備による遺言無効を防げる
前述のとおり遺言書の形式は大きく分けて2つあり、特に「自筆証書遺言」で無効となるケースが多いです。自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書本文を自書して作成する遺言書です。紙とペンさえあれば作成できるのが大きなメリットです。
簡易に作成できるのが大きなメリットである一方、形式不備の場合は遺言が無効になるというデメリットがあります。したがって、自筆証書遺言は経験のある専門家に相談しながら作成するほうが安心です。
② 戸籍など必要書類の収集の手間が省ける
遺言書を作成する場合、特に公正証書遺言では、戸籍や住民票等が必要となります。また、不動産を含む遺言を作成する場合は、正確に内容を記載するために、「登記事項証明書」が必要です。登記事項証明書には、土地や建物について、所有者、所在地、面積、地目、構造などが記載されています。
登記事項証明書は法務局やオンライン上で取得することが可能ですが、専門家に遺言作成を依頼する場合は、不動産の所在地を伝えることで、証明書を代理取得してもらうことができます。戸籍謄本や住民票の取得も依頼が可能です。
③ 公正証書遺言の手続きを一任できる
前述のとおり遺言には自筆証書遺言のほかに「公正証書遺言」があります。これは、公証人に作成してもらう遺言書です。公証人が関与して作成する遺言書のため、形式不備を防げるほか、公証役場にて保管してもらうことができ、遺言書の検索もできるメリットがあります。
デメリットとしては、コストがかかる、公証役場に最低でも1回は行かなければならないことが挙げられます。
公正証書遺言の作成手続きに専門家が関与する場合は、書類の収集を依頼できるほか、証人になってもらうこともできます。また、日常的に公証人とコミュニケーションをとっているため、全体の手続きもスムーズに進みやすいでしょう。
④ 自筆証書遺言書保管制度の利用を支援してもらえる
自筆証書遺言は、作成後に法務局で保管してもらえる制度があります。これを「自筆証書遺言書保管制度」と言い、2020年7月10日に始まった新しい制度です。
この制度には下記のような様々なメリットがあるため、自筆証書遺言で作成する場合は利用をお勧めします。
・遺言を公的機関で保管してもらうことができる。
・保管申請時には遺言の形式もチェックされるため、不備による無効を防ぐことができる。
・相続開始後,家庭裁判所における検認が不要。
・相続開始後,相続人等は,法務局において遺言書を閲覧したり,遺言書情報証明書の交付が受けられる。
・遺言者が指定した対象者への通知を希望した場合等に、法務局が遺言者の死亡を確認した際、遺言書が法務局で保管されている事実を通知してくれる。
これらの様々なメリットを総合すると、遺言が無効になる可能性が低く、遺言の存在を知らないままに相続手続きが進むことも回避できることでしょう。なお、保管申請手数料は 3900 円必要です。
この制度を利用するためには、法務局に保管申請を行う必要があり、司法書士に遺言作成を依頼した場合は、保管申請書の作成についても、依頼することが可能です。
⑤登記手続きまでワンストップで依頼できる
不動産の登記名義人が亡くなった場合、相続人(受遺者)への遺言による相続登記を行うこととなります。登記申請には遺言書の原本を添付します。遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言などの形式がありますが、上記の遺言書保管制度で通知を希望している場合を除き、相続人に遺言の存在が通知されることはありません。
司法書士に相続登記を依頼することを前提に遺言作成を依頼し、相続人に司法書士の連絡先を伝えておけば、スムーズに相続登記を行える可能性が高くなります。
3. 遺言書作成の司法書士費用の目安
遺言書作成の費用は遺産の多寡によって変わってしまいますが、参考費用としては、自筆証書遺言の原案作成を依頼した場合は、4~6万円ほどの報酬が一般的だと思います。公正証書遺言の原案作成を依頼した場合は、5~8万円ほどで引き受ける司法書士が多いでしょう。公正証書遺言については、証人を依頼するかどうかでも料金が変わるので、依頼内容を具体的に相談すれば、正確な費用を知ることができるでしょう。
4.遺言書完成までの流れ
・自筆証書遺言を作成する手続きの流れ
自筆証書遺言は遺言者本人が自分で自書しなければなりません。司法書士には、遺言内容の原案作成や、形式チェックを依頼します。相談の際に遺言の目的や対象の不動産を伝えると、必要な資料を司法書士が収集し、原案を作成してもらえます。相談の前に、誰にどのような資産を渡すかを決めておくと、スムーズに手続きが行えます。
・ 公正証書遺言を作成する手続きの流れ
公正証書遺言は、公証人が作成します。公証役場で公証人に遺言内容を伝え、公証人が書面にまとめます。公正証書遺言には証人という立会人が2人必要です。司法書士に依頼した場合は、司法書士に手配を依頼することが可能です。
遺言の原案作成を司法書士に依頼し、書類の収集も依頼した場合は、遺言者が行うことは内容を司法書士に伝えること、財産評価に関する一部書類を渡すことだけです。負担は少なく、公正証書遺言も作成しやすくなるでしょう。
5.遺言書作成を依頼する司法書士を選ぶ際のポイント
・隣接士業と連携している事務所を選びましょう。
争いのない相続手続きは、預金解約などの一般的な手続きのほかは、不動産登記と相続税申告で終わることがほとんどです。
このうち、司法書士は不動産登記の代理は行えますが、相続税申告は税理士のみが行うことができます。相続税申告が見込まれる場合は、税理士と提携している司法書士を選ぶと良いでしょう。
また、紛争が顕在化していたり、予想されたりする場合については、弁護士への相談を検討することをお勧めします。
6.まとめ
これまで述べてきたとおり、不動産の相続や遺贈を含む遺言書を作成する際には、遺言の手続きから登記手続きまでワンストップで依頼できる司法書士に相談するのが有力な選択肢となります。
相続にお悩みであれば、縁満へご相談ください。相続手続きを支援する弁護士・行政書士・司法書士・税理士が所属しております。土日祝日・夜間も対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。