相続が発生した場合の相続税の申告と所得税の確定申告の注意点
豊中市、箕面市、大阪市を中心に相続手続きのサポートをしております、税理士の蔵重です。
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大切な方が亡くなり、相続が発生すると、遺されたご家族は様々な手続きに追われることになります。その中でも、税金に関する手続きは特に複雑に感じられるかもしれません。
「相続したら確定申告が必要なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
結論から言うと、相続で財産を取得した場合、原則として所得税の確定申告は不要です。
これは、相続財産には相続税が課税されるため、所得税との二重課税を避けるためです。
しかし、一部のケースでは、相続後に確定申告が必要となる場合があります。
本記事では、相続があった場合の確定申告に関する注意点を、準確定申告と相続人自身の確定申告の二つの視点から、一般の方にも分かりやすく解説します。
- 1. 相続しただけでは、基本的に確定申告はいらない
- 2. ただし「亡くなった人の分の申告」は必要なことがある
- 3. 相続後に売る・貸す・もらうと申告が必要になることがある
【1】相続税申告と確定申告(所得税)の違い
相続があった場合に必要となる税金の手続きには、相続税申告と所得税の確定申告の大きく二つがあります。
(1)相続税
相続税は、亡くなった方の財産を相続や遺贈によって取得した場合に課される税金であり相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要となります。
相続税申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
相続税はかからないケース(基礎控除額以下、配偶者の税額軽減の適用など)でも、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの特例を適用して相続税がゼロになる場合、これらの特例の適用を受けるためには相続税申告が必要となります。
また、相続税の計算においては、被相続人から相続発生前3年以内に受けた暦年贈与の財産も相続財産に加算されるため、注意が必要です。
(2)所得税
所得税は、個人の所得(給料、事業の利益、年金など儲け)に対して課される税金です。
【2】故人(被相続人)のための「準確定申告」
相続が発生した場合にまず考慮すべき確定申告が「準確定申告」です。
これは、亡くなった方(被相続人)が生きていた期間(毎年1月1日から死亡した日まで)の所得について行う確定申告を指します。
(1)準確定申告が必要なケースと期限
準確定申告は、亡くなった方に確定申告の義務があった場合に必要となります。具体的な例としては、以下のようなケースが挙げられます。
• 給与所得が2,000万円を超えていた場合
• 2ヵ所以上から給料をもらっていた場合
• 自営業者で事業所得や不動産所得があった場合
• 株式や不動産を売却し、譲渡所得があった場合
• 公的年金等の受給額が400万円を超えていた場合、または公的年金等以外の所得金額が20万円を超えていた場合
• 生命保険の満期保険金や一時金を受け取っていた場合
これらのケースに該当する場合、相続人(包括受遺者を含む)が、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告と納税をしなければなりません。この期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性がありますので、注意が必要です。
なお、亡くなった方の所得が給与所得や年金収入のみで源泉徴収されていた場合など、申告義務がない場合でも、医療費控除や社会保険料控除などを適用することで所得税が還付されることがあります。
この場合も準確定申告を行うことで、還付金を受け取れる可能性があるため、申告しておいた方がお得です。
(2)準確定申告における所得控除の適用
準確定申告では、所得控除の対象となる期間に注意が必要です。
• 医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などは、死亡の日までに被相続人が支払った金額が対象となります。死亡後に相続人が支払った医療費は、被相続人の準確定申告では控除できません。
• 配偶者控除や扶養控除等の適用は、死亡の日の現況により判定されます。月割計算は行われません。
(3)提出方法と書類
準確定申告書には、一般的な確定申告書の書式を使用し、表題部分に「準確定申告」と記載し、被相続人の死亡年月日を記入します。
相続人が2人以上いる場合は、各相続人が連署して提出するのが原則ですが、他の相続人の氏名を付記して個別に提出することも可能です。
この場合、提出した相続人は他の相続人に申告内容を通知しなければなりません。
提出先は、被相続人の死亡当時の納税地を管轄する税務署です。確定申告書に加えて、「死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」の添付が必要です。
還付金の受領を相続人の代表者に委任する場合は、別途「委任状」の提出も必要です。
【3】相続人自身の「確定申告」が必要になるケース
相続によって財産を取得した場合、原則として相続人自身の所得税の確定申告は不要ですが、相続した財産の種類や相続後の取扱いによっては、相続人自身が確定申告をしなければならない場合があります。
(1)相続した財産を売却した場合
相続した不動産や有価証券などを売却し、利益(譲渡所得)が生じた場合、所得税の確定申告が必要となります。
- 譲渡所得の金額は、「売却額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算されます。
- 不動産の譲渡所得の税率は、所有期間によって大きく異なります。相続した不動産の所有期間は、原則として被相続人が取得した日から計算されます。
長期譲渡所得(所有期間5年超):税率 20.315%(所得税及び住民税)
短期譲渡所得(所有期間5年以下):税率 39.63%(所得税及び住民税)
• 相続財産を譲渡した場合に適用できる特例として、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」や「被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合の特例(3,000万円控除)」などがあります。
これらの特例を適用するには、確定申告が必要です。
(2)賃貸不動産など、収入を生む遺産を相続した場合
賃貸マンションや駐車場など、収益を生む不動産を相続し、相続後も賃料収入として相続人の収入となる場合、所得税の確定申告が必要です。
例えば、相続発生日が4月20日だった場合、1月1日~4月19日までの収入は被相続人のものとして準確定申告を行い、4月20日~12月31日までの収入は相続人の収入となるため、翌年の確定申告期間(2月16日~3月15日)に確定申告を行います。
(3)死亡保険金や未支給年金を受け取った場合
死亡保険金を受け取った場合、保険料を支払った人(契約者)と保険金を受け取った人(受取人)の関係によって、課税される税金の種類が異なります。
①相続人自身が保険料を負担していた場合、その死亡保険金には所得税が課税されるため、確定申告が必要になります。受け取り方によっては、「一時所得」または「雑所得」として扱われます。
◆一時金で受け取った場合:一時所得として課税されます。一時所得には50万円の特別控除があります。
◆年金として受け取った場合:雑所得として課税されます。
※なお、被相続人が保険料を支払っていた場合の死亡保険金は相続税、被相続人及び受取人以外の方が保険料を支払っていた場合の死亡保険金は贈与税の対象となります。
②被相続人の未支給年金(亡くなった後に支払われる年金)も相続人の一時所得となります。こちらも一時所得の特別控除50万円が適用されるため、合計一時所得が50万円以下の場合は申告不要です。
(4) 相続した遺産を換価分割した場合
相続財産が不動産のみで公平な分割が難しい場合などに、不動産を売却して現金化し、その現金を相続人間で分割することを「換価分割」といいます。この売却益部分には譲渡所得税が課税されるため、相続人自身の確定申告が必要となります。
(5)相続した財産を国などに寄付した場合
相続や遺贈によって取得した財産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した場合、その寄付した財産は相続税の対象から外れます。
さらに、寄付をした相続人は確定申告を行うことで「寄付金控除」を適用し、所得税の還付を受けられる可能性があります。
まとめと専門家への相談
相続発生後の税金に関する手続きは多岐にわたり、準確定申告、相続人自身の確定申告、そして相続税申告と、それぞれ異なる目的、対象期間、提出期限、提出書類があります。
これらすべてを自分一人で正確に行うことは、非常に大きな負担となるでしょう。特に、確定申告や相続税の専門知識がない方にとっては、判断が難しい場面も少なくありません。
申告期限に間に合わなかったり、計算ミスや申告漏れがあったりすると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。
このような不安がある場合は、税理士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
相続の対象者について、ご不明点などある方は、相続の相談を専門に対応している私たち縁満に、いつでもご相談ください。
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