豊中市、箕面市、大阪市を中心に相続手続きのサポートをしております司法書士の清原です。
相続手続きで、遺産分割協議をするときや相続税の申告を行うとき、亡くなった人の預貯金の「残高証明書」が必要になることがあります。どういった時に必要になるのか、残高証明書を取得するために必要な書類や手続きについて解説します
1.残高証明書ってなに?
はじめに、残高証明書とは、特定の日付の預貯金や有価証券、投資信託などがいくらあるのか金融機関が証明してくれる書類です。相続手続きでは、相続発生日(被相続人が亡くなった日)の残高を証明したものが必要となります。
なお、残高証明書にはその時点での金融資産の残高が記載されていますが、預貯金の出入金履歴の記載はありません。相続発生時に亡くなった方の財産の時価を知るために必要な書類となります。
残高証明書の記載事項は、銀行名、支店名、口座番号および請求者が指定した日(相続の場合は、相続発生日)における普通預金口座や定期預金口座の預貯金残高が記載されます。もしローンなどの債務があれば、その借入残高金額も記載されます。
2.残高証明書が必要になる場合って?
①遺産の分け方を話し合う遺産分割協議
遺産の分け方を決める話し合い(遺産分割協議という)をする際、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産を明確にしなければなりません。不動産の有無、預貯金、有価証券の有無およびその価値(評価額)を調査しなければなりません。すべての遺産を把握して話し合いをしないと後に相続トラブルにつながりかねません。したがって、相続発生時にどれだけの金融資産があったのかを正確に把握できる残高証明書が必要になります。
ただし、ある一定の相続人(例えば夫が亡くなった場合の妻)が全財産を相続する等の遺産分割協議なら、正確な金融資産の額を把握しなくても問題ない場合は、残高証明書を取得するまでもないケースもございます。
②相続税の申告時
相続税の申告および納税は、遺産の総額が相続税の非課税枠(基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人の数」)を超えていた場合、必要となります。
相続税の申告が必要な場合は、遺産の評価額を調査し、相続税がかかるかどうかを確認しなければなりません。相続税の申告時には、金融資産の正確な残高を税務署に示す必要があり、残高証明書を添付することで証明できます。さらに相続税の申告には、被相続人の口座の過去3~5年分の取引履歴も調査しなければならないこともあるため、保管されている古い通帳または入出金履歴の請求も必要となることもあります。
3.残高証明書はどうやって発行するの?
①預貯金口座の金融機関へ請求
残高証明書の発行は、相続手続きによる払戻請求と同時に行います。支店の窓口又は電話にて相続が生じた旨を伝え、必要書類(戸籍関係、印鑑証明書等、下記③参照)を提出し、払戻請求及び残高証明書の発行を依頼します。金融機関によっては相続専門の窓口もあるので、専用の窓口に連絡するケースもあります。1つの支店に普通預金と定期預金がある場合は、残高証明書に両方の残高が記載されます。複数の支店に口座がある場合でも、1カ所で手続きできるのが一般的です。
② 残高証明書を請求できる人はだれ?
残高証明書の請求は、相続人であれば誰でも請求可能です。また委任状があれば代理人でも申請することが可能です。弁護士、司法書士などの士業や遺言執行者、相続財産管理人(相続人が誰もいないときに家庭裁判所が選任する)も発行の請求が可能です。
③残高証明書の発行に必要な書類
残高証明書を取得するには下記の書類が必要です。
・被相続人の戸籍謄本や除籍謄本(死亡の事実がわかる書類)
・申請者が相続人であることが確認できる戸籍謄本など
・金融機関所定の残高証明書発行依頼書
・申請者のの実印と印鑑証明書
・申請者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
また、被相続人・相続人の戸籍謄本の代わりに、法務局が発行した登記官の認証付き「法定相続情報一覧図の写し」で手続きすることもできます。相続人本人でない人が請求する場合は、相続人の委任状が必要です。
④ 残高証明書はどのくらいで発行される?
上記書類を窓口又は郵送で提出すると、1~2週間くらいで残高証明書は発行されます。
⑤残高証明書の発行手数料は?
残高証明書の発行には手数料がかかります。約1,000円前後の手数料が必要です。
4.残高証明書の取得で注意すべきこと
① まず金融機関に電話で問い合わせる
金融機関によっては、電話で被相続人が亡くなったことを伝えてからでないと窓口での手続きができないところがあります。手続き方法や必要書類なども金融機関によって異なることがあるので、まず口座のある支店に電話で問い合わせて書類や手順を確認してから窓口へ出向くのがよいでしょう。
②残高証明書の日付に注意
相続の際、被相続人が保有していた預貯金の評価額は亡くなった日を基準とするので、残高証明書には亡くなった日の残高を記載してもらいます。
③ 定期預金は「経過利息計算書」も必要
定期預金の場合、残高証明書には元金の額が記載されますが、実際には被相続人が亡くなった日までの利息がつきます。現在のような低金利でも、預け入れた金額が大きい場合は利息額も多くなるので、残高証明書と同時に「経過利息計算書」も発行してもらいます。
④ 口座は金融機関に連絡した日に凍結される
残高証明書の請求をすると、金融機関は預金者の死亡を知ることになります。そうすると金融機関は亡くなった人の口座を凍結します。それを解除するには、遺言書あるいは遺産分割協議書、被相続人と相続人の戸籍謄本などが必要で、手続きに時間がかかります。その間に亡くなった人の葬儀費用や遺族の当面の生活費が不足するような場合は、相続人単独で一定額まで引き出せる「相続預金仮払い制度」の利用も考えられます。
口座が凍結されると、公共料金などの引き落としもできなくなるため、すみやかに引き落とし口座の変更をしなければなりません。
5.まとめ
残高証明書の取得は、口座のある金融機関を相続人が把握していることが大前提です。亡くなった人の口座がどこにあるかわからないと、残高証明書を発行してもらうこともできません。また、遺産分割や相続税の申告・納税が終わったあとに預金が見つかると、手続きをやり直す必要も出てきます。
どの金融機関に口座があるかということは、家族に伝えておく、あるいは親から聞いておくことが大切です。
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