豊中市、箕面市、池田市、大阪市を中心に相続手続きのサポートをしております弁護士の藤原です。
遺産分割を相続人間で話し合っても、結論が出ずに、相続人間でもめた場合、調停、審判等の家庭裁判所を利用しての解決方法があります。
1 調停
離婚、遺産分割のような、家族間のもめごとは、まず、第三者である調停委員が間に入って、話し合いで解決を目指すために、調停から始めなければなりません。
話合いでの解決を目指しますので、当事者全員が合意しなければ、調停は成立しません。全員の合意ができれば、合意ができた遺産分割内容が記載された調停調書が作成され、調書内容とおりに遺産分割が行われます。
2 審判移行
調停を申し立てても、遺産分割内容が合意に至らない場合(当事者の一部が参加しなった場合も含みます。)、調停は不成立となり、自動的に遺産分割審判へと移行します。改めて、審判を申し立てる必要はありません。遺産分割審判では、裁判所が当事者の主張、資料を考慮し、審判によって遺産分割の方法についての決定を下します。審判内容に不満がある場合、高等裁判所への即時抗告ができます。
3 審判移行ができない場合
調停が不成立となって終了しても自動的に審判に移行しない場合もあります。審判での遺産分割内容を決定するのにその前提となる要素が欠ける場合です。
① 遺産の範囲に争いがある場合
遺産の隠匿や名義預金等、遺産分割の対象となる財産の範囲に争いがある場合、調停が不成立になっても審判に自動的に移行しません。地方裁判所での遺産確認訴訟で地方裁判所での遺産の範囲を決めてから、家庭裁判所の手続きにもどるように、家庭裁判所から、指示されます。
② 相続人の範囲に争いがある場合
養子縁組の有効性、相続持分の譲渡の有効性が争われる場合、調停が不成立になっても審判に自動的に移行しません。地方裁判所での相続人の地位不存在確認訴訟を行い、相続人の範囲を確定してから、家庭裁判所の手続きにもどるように、家庭裁判所から、指示されます。
③ 遺言の有効性を争う場合
認知症等、遺言の作成能力に問題があり、遺言書が無効ではないかと争われる場合、その遺言書の内容を前提とした審判はできず、調停が不成立であっても、自動的に審判移行はしません。地方裁判所で遺言無効確認訴訟で遺言の有効性について、判断を受けてから、家庭裁判所の手続きに戻るように家庭裁判所に指示されます。
4 遺産の使い込みが発覚された場合
銀行口座の取引明細は10年間、遡って取り寄せることができます。取引明細で、特定の相続人に多額な金額が振り込まれたり、被相続人の預金から、毎日のようにATMの限度額一杯の金額である50万円が引き出されている場合があります。
この場合、この問題も含めて遺産分割調停の中で話合いを行うと前述の遺産の範囲が問題となり、調停が不成立になっても、審判への移行はされません。使い込みや使途不明金の問題は、いったん棚上げして、その他の財産について、調停を成立させ、使い込みの問題は、調停後、損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟で別途争いをすることがあります。
5 相続人が非常にたくさんいる場合
何代か前の方の不動産登記名義が残っていて、売却のために相続登記を入れるために相続人の調査を始めたら、30人以上の相続人がいることが分かり、途方にくれそうになることがあります。遺産分割協議書を作成して、1人ずつ実印の押印と署名を求めている途中で、認知症で後見人が必要になったり、相続人が亡くなり、数次相続が発生し相続人が更に増える場合もあります。
早期に解決するためにも、調停制度を利用するべきだと考えます。調停を申し立てた後に、裁判所から、各相続人に相続持分についての考えの照会を受けます。法定相続どおりに遺産を分けてもらいたいのか、相続持分を放棄したのか、相続持分を他の相続人に譲渡したいのか照会を受けます。この照会を経て、相続人の数が整理されます。その後、残った相続人との間で、話し合いが行われます。相続人の数が多いと調停に参加しようとしない相続人や何の意思表示を行わない相続人が出てきます。この場合、調停に代わる審判が比較的に早期に出され、各相続人に対し、審判書が送られ、2週間以内に異議がでなければ、審判書の内容が確定します。
6 遺産分割で揉めた場合、相談は弁護士へ
遺産相続について相続人間で揉め、調停を考えた場合、遺産分割をめぐる知識や見通しは、普段、調停手続きを利用されていない方からすれば、分かりにくく不安な状態におかれてしまいます。調停の申立準備から、弁護士に依頼し、問題解決にあたるべきだと考えています。